視覚障害者のガイドヘルプをする前に、視覚障害についての理解を深めておくことは大切です。相手の気持ちを考えた、お互いに気持ちの良いガイドヘルプが出来るように心がけましょう。
視覚障害は全く見えない「盲(全盲)」と全く見えないわけではない「弱視」(ロービジョン)に大別されます。
盲(全盲)とは全く見えないことを言います。しかし、一般的な視力検査ではある程度以下の視力を測定することができません。そこで、0.01よりも低い視力の表し方には次のようなものがあります。
弱視の定義は揺れていますが、両眼の矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズをかけた時の視力)が0.3未満で、主に視覚による学習や、日常生活の諸々行動ができる状態、というのが現在の一般的な定義です。しかし、弱視は単に視力が悪いというだけではなく、その種類や見えにくさは多岐にわたります。ある特定の環境下やある特定の行為においてならばさほど不自由することはない、という弱視者もいます。そういった弱視者は周囲から「なんだ結構見えてるんだ」と思われ、いざ補助が必要になった時に「自分でできるくせに甘えている」と、勘違いされてしまうこともあります。"視覚障害者=全盲"というのは、視覚障害者に対する根深い偏見の一つです。
弱視者の中には以下の4つの要素のうち一つあるいは複数、少し不十分なものがあると、見えにくくなってしまう人がいます。
皆さんも視力検査をやったことはあると思います。ランドルト環という"C"の形をしたものの開いている方向を答えるという方法で測定しましたよね?
視力検査は、上記の視覚の要素のうち、明るさ・コントラスト・時間を一定とし、大きさを変化させて行っています。しかし、1つを除く他3つの視覚の要素を固定した状態で行う視力検査の結果だけで弱視者の生活における視覚の状態を把握する、というのは難しいことは、先の視覚の要素の説明で分かってもらえると思います。視力の値だけがその人の日常生活における困難さを表すわけではありません。
ランドルト環の開いているところは正方形、つまりランドルト環の太さと開いた隙間は同じ長さです。これを5m遠くから離れて見て、どれぐらいの隙間まで判別できるか調べます。それは下図のようにx分(角度の単位。60分=1度)で表すことが出来ます。このxの逆数、1/xが視力として使われます。1分の隙間が判別出来れば視力1.0、0.5分の隙間が判別出来れば視力2.0です。
さて、実際弱視者にはどう見えているのでしょうか。弱視者の見え方は以下の8つに大別できますが、そのうちの一つだけが当てはまるという弱視者も、複数併せ持ち合併している弱視者もいます。
例えば中心だけ見える求心性視野狭窄では読み書きは出来ても歩行は困難ですし、焦点が合う中心だけが見えない中心暗転では歩行は出来ても読み書きは難しいです。ひとりひとりの視覚障害を理解し、どんな補助が必要なのか知ることが大切なのです。
(参考:『視覚障害児・者の理解と支援』、芝田裕一、北大路書房)